コタ株式会社 : 小田博英社長

IRデータバンク第16回目のインタビューは、美容室向け頭髪用化粧品を展開するコタ株式会社の小田博英社長の登場です。【2007年10月3日実施】



――社長の学生生活や、会社を担うまでの社会人経験などをお聞かせください。

 学生生活を振り返ってみますと、あまり真面目な学生ではなかったと思います。もちろん大学には行っていましたが、勉強以外にも学生生活をいろいろなことで楽しんでいました。

大学を卒業後、大阪に本社がある大手文具メーカーに就職しました。入社後、東京の支社に配属になり、2年半、東京で営業の仕事をしていました。

その後、現在のコタ株式会社に入社し、入社後2年半を経過した27歳の時に当社の最初の営業拠点を名古屋に開設するということになり、その初代所長として赴任しました。
名古屋という地名は知っていましたが、そのほかの事は何もわからない状況で赴任しました。従来からの得意先が2、3軒ありましたが、ほとんどゼロからのスタートでした。

業務内容は、美容室に製品を販売するわけですが、昼間は皆さんお忙しく、話を詳しく聞いていただける時間はありません。アポイントだけをいただいて、実際に詳しくお話をするのはお店の営業が終わった夜になります。ですから、私のやっていた営業という仕事は、売上が上がれば上がるほど夜が忙しくなる仕事でした。

ところが、赴任してすぐの頃は、なかなか夜に仕事は入りませんでした。昼に訪ねてなんとか夜のアポイントをいただくように頑張りましたが、最初は相手にしていただけず、名古屋へ赴任した当初は悩みの連続でした。

当時、メーカーである当社が美容室への直販を行うのは初めてでした。また、私も所長を務めるのは初めてでしたから、何をすれば良いのかわかりませんでした。しかし、「初めての仕事に難しいも簡単もない」という考えで前向きに挑戦していき、一応の成績を残すことができました。その後、現在に至っています。


――御社のビジネスモデルについて教えて下さい。

 現在、販売している製品の分類としては、「業務用の頭髪化粧品」ということになります。具体的には美容室で使われるシャンプーやトリートメント、ムース、ジェル、そして育毛剤、パーマ剤、カラー剤などを、製造販売している会社です。

開発から販売まで、一貫して自社で行なっているというのがひとつの特徴ですが、その中でビジネスの方法として、「旬報店(じゅんぽうてん)システム」というのがあり、旬報店を中心とした「コンサルティング・セールス」を行っています。それからトイレタリー(シャンプー、トリートメントなど)を中心とした店販(※)に特徴がある会社です。

※店販・・・・・・美容室に来店されたお客様に、美容師が髪の状態などのカウンセリングを行い、そのお客様のヘアケアに最適かつ必要な製品をお使いいただくようお勧めして販売すること

旬報店システムを中心としたコンサルティング・セールスが特徴になるわけですが、具体的には、過去の営業データ、たとえば売上高、総客数、さらにパーマ客数、カラー客数、客単価等のデータを10日ごとに当社へ送っていただき、当社独自の分析ツールで前年対比、目標対比、それに関する分析、お店の現状等についてフィードバックします。その上で、そのお店に必要なアドバイスを行っています。これが旬報店システムです。

このシステムは、「お取引していただいている美容室に繁栄していただくことが、当社の繁栄につながる」という理念のもとに行なっているものです。私たちの業界を見ると、メーカー各社の市場の奪い合いという現状は否定できません。しかし、たとえば年間100万円発注している美容室があったとして、発注先を当社に変えていただければ、当社は100万円の売上となります。当社にとっては喜ばしいことですが、美容室としてみれば、単に仕入先が変わっただけで大きなメリットはありません。

美容室側からみれば、当社と付き合うことによって何かメリットがなければ、特に仕入先を変える意味はないかもしれません。そこで当社としては、取引していただくことによって取引していただいた美容室の業績を必ず良くしようという思いで日々取り組んでいます。そこが当社とお付き合いいただくメリットであり当社の最大の特徴となっています。
旬報店にアドバイスを行うことによって、100万円のご購入だったものが200万円や300万円になることがありますので、市場を奪い合うというよりも新しい市場を開拓しているというイメージを持っています。


――このユニークなシステムは、同業他社ではされていないということですね。

 お店のレジと連動して前年比や客単価を算出するといったサービスを行っている会社はたくさんあります。前年実績との比較分析が主体となりますが、重要なことは、その数字に対するアドバイスのノウハウをどれだけ持っているかということです。

旬報店システムでのコンサルティングが戦略だとすれば、業績の向上に大きく貢献するもののひとつが先ほど申し上げた店販の推進で、これは戦術にあたると思います。

このようなことについては、他メーカーさんや代理店はあまり積極的ではありません。他メーカーさんには、美容室の経営にまで口を出すのはタブーだという考え方が強いように思います。
その美容室の方針はオーナーの自由で、メーカーとしてそこに口を出すべきではないという考え方です。メーカーはいい製品をお届けして、その中からお好みの製品をお好きなように使っていただけば良いというのが一般的な考え方です。

しかし当社はそうではなく、当社の製品を使っていただくからには、それによって利益を上げていただく、あるいは売上を上げていただくなど、業績の向上につながらなければ意味がないと考えています。
美容室の多くは、職人気質のオーナーさんが経営的な勉強をする暇もなくずっと進んでこられていますが、お店は一定の規模までは大きくなります。しかしその後、何か問題を感じられた段階からが当社の強みを発揮できる時であり、オーナーさんと当社との考えが合うようになっていくのではないでしょうか。


――旬報店システムもあわせて、御社の強みと弱みについてもう少しお聞かせください。

 強みについては、旬報店システムの「戦略」に対して、店販という強い「戦術」を持っています。
通常のお店では店販売上の比率が平均で2〜3%です。しかし、当社の旬報店ではほぼ10%を超えています。多いところは19%というところもあります。

これは、販売ノウハウを持っているということももちろんありますが、何よりも製品力が圧倒的に強いからだと思っています。特にシャンプーとトリートメント、これが当社の製品の中でも特に強いものです。おそらく当社のシャンプー、トリートメントの品質は日本一の水準だと思いますし、これは胸を張って言えます。

男性の方は基本的に髪の毛が短く、あまり傷んでいませんので違いがわかりにくいのですが、女性の方は、当社の製品を使うと明らかに違いがわかっていただけます。私が耳にしている範疇ですが、ほぼ100%の方が、「これほど素晴らしいシャンプー、トリートメントは初めてだ」、「どうすれば買えるの?」と言われます。ですから、強みに関してはコンサルティングというソフト面の強みもありますが、当然、ハードである製品の良さ、強みも持っています。
弱みあるいは課題といえば、このコンサルティング・セールスは、どうしても「人」が重要になります。コンサルティング・セールスはとても奥が深く、入社してから本当にお客様に受け入れられるコンサルティング・セールスができるようになるまで、大変時間がかかるという点は課題の一つだと思います。

これからは緩やかながら求人する側が厳しくなる時代を迎えます。求人倍率が高くなってきていますから、私たちの立場から見た場合、採用難になっていきます。学生さんから見ると就職がしやすくなるので良いことになります。そういう状況ですから、人数の確保、優秀な人材の確保が難しくなるという気がしています。


――競合企業との優位性についてお聞かせください。

 当社とまったく同じ業種で上場している企業さんがあります。仮にA社さんとしますと、会社規模ではA社さんの方が圧倒的に大きいですから、この点では当社は大きく遅れをとっていると思います。

一方、A社さんと当社では事業で目指している方向が根本的に異なっていると認識しています。当社の場合は先ほども申し上げましたが、店販製品に特徴がありますから、美容室のお客様にどれだけ販売できるかという点に重点をおいています。それに対してA社さんは、美容室で使われるヘアカラーやパーマという業務用製品に力を入れられているように思います。また、「美容師さんに受け入れられるものづくり」が中心なのではないかと感じています。

コンサルティングに関しては、A社さんはどちらかというと美容技術面の指導をされていらっしゃるので、技術教育面では間違いなくA社さんが上だと思いますが、根本的に当社と目指している方向が違うと思っていますので、それほど気にしていません。
これはどちらが良いというのではなく、各社の理念や戦略の違いが現れているにすぎません。